アラフォー独身、汚部屋と格闘中

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行きたくなかったけど、行かなくてはいけなくて。
早く会いに行きたいけど、そうすると「さよなら」しなくてはいけなくて。
わたしの住む街とは違う、横長の風景には、やっぱり慣れなくて。
街灯の無い夜は、広がる闇に包まれて、乱れ散る桜が怖かった。

『お兄ちゃん(従兄)、ちょっと、待っててね。声だけかけたら、すぐ降りてくるから』

テレビで見るような、夜に病院に行くと、静まり返った廊下に足音が響くなんてことはなくて、
絨毯張りの病院の廊下は、ヒールに絡み付いて、歩きづらかった。

『お父さん(叔父)、入ってもいい?あ、ごめん、トイレかな?』
病室内にあるトイレは、とても広くて、カーテンだけで仕切られいる。

バシャー!!

父は、下半身は便座にあるのに、思い切りカーテンを開けた。
右手を伸ばし、手を激しく上下させ、「来い来い!」手は、わたしを呼んだ。
『いいの?行っても』
すると、今度は両手を激しく上下させて同じように、わたしを呼んだ。
下を、パジャマの上でそっと隠し、近づく、わたしの手を強く握った。

父は、のどにチューブを差しているため、声を失っている。
失った声は、手に変わり、わたしを呼び止め、わたしを握っている。

『あくと、行くね』
もっと話したいのに、わたしの声が詰まっていた。
言わなきゃ、伝えなきゃ。
『あ"のっねっっ!
わたしのお父さんはっ、お父さんっだけっなんだから、元気でおってもらわんと、

こまるでねっつ!!』

優しく伝えたかったのに、泣きそうな声を聞かせたくなくて、無理に声を出したために、
強くてキツイ、ただ、言い放っただけの言葉になった。

父は、わたしの顔をじっと見つめて、涙ぐみ、何度も何度も頷いた。
『お父さん、夏までに、また来るから。そのとき、温泉連れてってね』
そして、また、うつむいたままで、うなづいていた。
初めて見る、父の涙だった。
幼い頃に見た、日本刀や猟銃を手入れする怖い父では無く、優しい父がいた。
この部屋から、出て行きたくはなかった。


父との温泉を思っていた。
わたしは、他人さまが多い温泉は、好きではなくて、むしろ嫌いだし、
街にある、スーパー温泉なんていう場所なんかも大嫌いで、ただ、滝のある銭湯じゃん。
くらいに思ってて、だけども、だけども、この人の為なら、この父の為なら、
父の大好きな温泉を混浴で、入っていいとさえも思う。

「名残惜しくなるで、あくと、もう行かな」
母(叔母)に、そう声をかけられ、現実に戻される。

大人の事情さえなければ、こんな思いをしなくても済んだのに、
大人の事情があったからこそ、血の繋がりのない、この人を父と呼べるのだ。


■つづく・・・

大嫌いな夏、到来。だけども、梅雨に救われる♪
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